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ボン・ガイドライン

*2002年9月5日JBA訳

 English

遺伝資源へのアクセスと
その利用から生じる利益の公正・衡平な配分に関する
ボン・ガイドライン



I .一般条項

A. 重要な特徴

1.この指針は、生物多様性条約第8条(j)項、第10条(c)項、第15条、第16条および第19条の規定に特に関連したアクセスと利益配分についての法律上、行政上または政策上の措置、また、アクセスと利益配分に関する相互に合意する条件に基づく契約およびその他の取り決めを起草および策定する際の参考例を提供することができる。

2.この指針のいかなる規定も、生物多様性条約に基づく締約国の権利義務を変更するものと解釈してはならない。

3.この指針のいかなる規定も、関連する国内法の変更を意図するものではない。

4.この指針のいかなる規定も、天然資源に関する国家の主権的権利に影響を及ぼすと解釈されるべきではない。

5.「提供者」、「利用者」および「利害関係者」のような用語の使用も含め、この指針のいかなる規定も、生物多様性条約に従って与えられる権利を越えて、遺伝資源に関する権利を与えるものと解釈されるべきではない。

6.この指針のいかなる規定も、遺伝資源を原産国から取得した時に相互に合意した条件から生ずる、遺伝資源に関する権利と義務に影響を及ぼすと解釈されるべきではない。

7.本指針は任意的なものであり、次の事項を保証する目的で策定された:

(a)任意性:この指針は、任意的に遺伝資源の利用者と提供者の両方に指針を提供することを意図する。
(b)使いやすさ:この指針は、有用性を最大限に高め、広範な適用をはかるために、簡素なものとした。
(c)実用性:この指針に含まれる要素は実用的なものであり、取扱い費用の削減を目的とする。
(d)受容性:この指針は、利用者と提供者の支持を得ることを意図する。
(e)補完性:この指針と他の国際文書は、相互に補完的である。
(f)進化的アプローチ:この指針は、アクセスと利益配分に関する経験が深まるにしたがって見直しを行い、適宜、改訂および改善されることを意図している。
(g)柔軟性:広範な分野、利用者および国内の状況並びに管轄範囲において有益なものとするために、指針は柔軟であるべきである。
(h)透明性:この指針は、アクセスと利益配分の措置の交渉および実施における透明性を促進することを意図している。

B. 使用する用語

8.生物多様性条約第2条で定義されている用語が、この指針に適用される。これらは、生物多様性、生物資源、バイオテクノロジー、遺伝資源の原産国、遺伝資源の提供国、生息域外保全、生息域内保全、遺伝素材、遺伝資源および生息域内状況を含む。

C. 範囲

9.生物多様性条約の対象となるすべての遺伝資源および関連する伝統的知識、工夫および慣行、並びにその資源の商業的またはその他の利用から生じる利益は、ヒトの遺伝資源を除き、この指針の対象とすべきである。

D. 関連する国際制度との関係

10.この指針は、関連する国際的な条約および組織の活動と首尾一貫し、相互補完的な方法で適用されるべきである。この指針は、FAO食糧・農業のための植物遺伝資源に関する国際条約におけるアクセスと利益配分の規定を損なわない。さらに、アクセスと利益配分問題に関する世界知的財産権機関(WIPO)の活動を考慮すべきである。この指針を適用するにあたっては、アクセスと利益配分に関する既存の地域的な条約および法制度をも考慮すべきである。

E. 目的

11.この指針の目的は、次のとおりである:

(a)生物多様性の保全と持続可能な利用に貢献すること。
(b)遺伝資源へのアクセスを促進し、公正かつ衡平な利益配分を保証するための透明性の高い枠組みを、締約国および利害関係者に提供すること。
(c)アクセスと利益配分の制度の策定において、締約国に指針を提供すること。
(d)アクセスと利益配分の措置における利害関係者(利用者と提供者)の慣行とアプローチについての情報提供を行うこと。
(e)アクセスと利益配分の措置に関する有効な交渉と実施を保証するための能力開発を行うこと。
(f)生物多様性条約の関連条項の実施に関する認識を向上させること。
(g)提供締約国、それらのうちでも特に開発途上国、さらにとりわけ後発開発途上国および小島嶼国、利害関係者および原住民・地域社会への適正な技術の十分かつ効果的な移転を促進すること。
(h)上記の目的達成に貢献するために、開発途上国、経済移行過程国である提供国への必要な資金の提供を促進すること。
(i)アクセスと利益配分における締約国間の協力のための仕組みとしてのクリアリングハウス・メカニズムを強化すること。
(j)国内法および関連の国際文書に従って、原住民・地域社会の伝統的知識、工夫および慣行の保護を認めるメカニズムおよびアクセスと利益配分制度の締約国による策定に貢献すること。
(k)開発途上国、さらにとりわけ後発開発途上国および小島嶼国の貧困の撲滅に貢献し、食糧安全保障、保健および文化的一体性の実現を支援すること。
(l)世界分類学イニシアティブ(GTI)が特記しているように分類学研究を妨げるべきではなく、提供者は分類に使用するための素材の取得を促進するべきであり、利用者はこうして得られた素材に関係するすべての情報を利用可能にすべきである。

12.この指針は、締約国が自国の生物多様性国家戦略および行動計画(NBSAP)の一部となる可能性があるアクセスと利益配分の全体戦略の作成において、また、遺伝資源へアクセスするステップおよび利益配分のプロセスに関わるステップの特定において、締約国を支援することを意図している。


II.生物多様性条約第15条に従ったアクセスと利益配分における役割および責任

A. 政府窓口(National focal point)

13.各締約国は、アクセスと利益配分のための政府窓口を一ヵ所指定し、その情報をクリアリングハウス・メカニズムを通じて利用可能にすべきである。政府窓口は、事前の情報に基づく同意および利益配分を含めた双方が合意する条件を取得するための手続き、権限ある国内当局、関係する原住民・地域社会、利害関係者に関し、クリアリングハウス・メカニズムを通じて遺伝資源のアクセス申請者に情報を提供すべきである。

B. 権限ある国内当局(Competent national authority)

14.権限ある国内当局が設置されている場合は、適用される国内の法律上、行政上または政策上の措置に従って、アクセスの承認に責任を有し、次の事柄に関して助言する責任を有することができる:

(a)交渉プロセス、
(b)事前の情報に基づく同意を得るための要件および相互に合意する条件に至るための要件、
(c)アクセスと利益配分の合意のモニタリングおよび評価、
(d)アクセスと利益配分の合意の実施/施行、
(e)申請の処理および合意の承認、
(f)アクセスされる遺伝資源の保全と持続可能な利用、
(g)アクセスと利益配分のプロセスにおいて、適宜に、その多様なステップに対して種々の利害関係者、特に原住民・地域社会が効果的に参加するためのメカニズム、
(h)決定方法と手続きが関係する原住民・地域社会が理解できる言語で行われるようにするとともに、原住民・地域社会が効果的に参加できるようにするためのメカニズム。

15.事前の情報に基づく同意を与える法的権限を有する権限ある国内当局は、この権限を、適宜、他の機関に委任することができる。

C. 責任

16.締約国と利害関係者が利用者と提供者のいずれにもなりうることを認識し、実行されるべき重要な要素を以下に示す:

(a) 遺伝資源の原産国である締約国または条約に従って遺伝資源を取得した他の締約国は:

()生物多様性条約第15条を順守することを確保するために、自国の政策的、行政的および法的措置の見直しを行うことを推奨される。
()生物多様性条約のクリアリングハウス・メカニズムおよび他の手段を通じてアクセス申請に関して報告することを推奨される。
()遺伝資源の商業化およびその他の利用が、遺伝資源の伝統的利用を妨げないよう確保するように努める。
()各国が自国の役割と責任を明確で客観的かつ透明な方法で果たすことを確保する。
()すべての利害関係者がアクセス活動による環境上の結果を考慮することを確保する。
()利害関係者、特に原住民・地域社会が当該国の決定事項を入手できるように確保するメカニズムを設けるべきである。
() 交渉において、原住民・地域社会が自分達の利益を十分に代表できる能力を高める措置を適宜、支援するべきである。

(b) 相互に合意する条件の実施において、利用者は:

()遺伝資源へのアクセスに先立ち、生物多様性条約第15条5項に従って、情報提供に基づく同意を得るよう努めるべきである。
()原住民・地域社会の習慣、伝統、価値観および慣行を尊重すべきである。
()原住民・地域社会からの情報の求めに応じるべきである。
()遺伝資源を取得した条件に合致する目的のためにのみ利用すべきである。
()遺伝資源を取得した目的以外の利用は、新たに事前の情報に基づく承認および相互に合意する条件が与えられた後にのみ行われることを保証すべきである。
()遺伝資源に関するすべての関連データ、とりわけ事前の情報に基づく同意の証拠書類と遺伝資源の原産地および利用ならびにその利用から生じる利益に関する情報を保管する。
()可能な限り、提供国においてかつその参加を得て、遺伝資源の利用を行うよう努力するべきである。
()遺伝資源を第三者に提供するときは、取得した素材に関するあらゆる諸条件を守り、事前の情報に基づく同意および利用条件を含む取得に関する適切なデータをこの第三者に提供し、第三者への提供に関するデータを記録し、保管する必要がある。非商業目的の分類学的研究を促進するために、相互に合意する条件に基づき、特別な条件を設けるべきである。
()生物多様性条約第16条により、また原住民・地域社会または利害関係者と設定した相互に同意した条件に従って、遺伝資源の商業的または他の利用から生じる利益の公平かつ衡平な配分を、提供国に対する技術移転を含め、確保すべきである。

(c) 提供者は次のことを行う必要がある:

()遺伝資源および/または伝統的知識の提供は、提供者がその権利を有する場合に限って行う。
()遺伝資源のアクセスに関して恣意的な制約を課すことを避けるよう努める。

(d) 遺伝資源の利用者を管轄下に持つ締約国は、適宜、遺伝資源を提供する締約国の事前の情報に基づく同意およびアクセスが認められる際の相互に合意する条件を遵守することを支援するために、適切な法律上、行政上、政策上の措置を取らなければならない。

()潜在的な利用者に対する遺伝資源へのアクセスに関する義務についての情報を提供するメカニズム
()知的財産権の申請における遺伝資源の原産国、原住民・地域社会の伝統的知識、工夫および慣行の出所の開示を推奨する措置
()遺伝資源の提供者である締約国の事前の情報に基づく同意なしに取得された遺伝資源の利用を防止することを目的とした措置
()アクセスと利益配分の合意に抵触するという主張に対応するための締約国間の協力
()アクセスと利益配分に関するルールを順守する機関に関する任意の認証制度
()公正でない貿易の慣行を抑制する措置
()利用者が上記16(b)の規定に従うことを奨励するその他の措置


III. 利害関係者の参加

17.利害関係者の関与は、アクセスと利益配分の措置の適切な策定および実施を確保するために不可欠である。しかし、利害関係者は多様であり、またその関心事も様々であることから、利害関係者の適切な関与はケースバイケースでのみ判断することができる。

18.以下を含むプロセスの各ステップにおいて、利害関係者と協議し、その見解に配慮すべきである:

(a)アクセスの決定、相互に合意する条件の交渉および実施、並びに利益配分の際。
(b)アクセスと利益配分に関する国家戦略、政策または制度の策定の際。

19.原住民・地域社会を含む利害関係者の関与を促すために、国内協議委員会などのような利害関係者の代表で構成する適切な協議の措置を講ずるべきである。

20.利害関係者の関与は、以下によって促進されるべきである:
(a)利害関係者が有効に参加できるようにするための、特に科学的および法律的な助言に関する情報の提供。
(b)相互に合意する条件および契約の策定と実施等のように、利害関係者がアクセスと利益配分の措置の様々な段階に積極的に関わるための能力開発の支援の提供。

21.アクセスと利益配分に関与する利害関係者は、相互に合意する条件を交渉するときに、仲介者または推進者の支持を求めることができる。


IV.アクセスと利益配分プロセスの各ステップ

A. 全体戦略

22.アクセスと利益配分のシステムは、その国または域内レベルでのアクセスと利益配分の全体戦略に基づくべきである。このアクセスと利益配分の戦略は、生物多様性の保全と持続可能な利用を目的にすべきであり、生物多様性国家戦略および行動計画の一部であってもよく、また公平な利益配分を促進するべきである。

B. ステップの明確化

23.遺伝資源のアクセスと利益配分のプロセスに関わるステップには、利益配分を含め、アクセスに先立つ活動、遺伝資源に関する研究開発およびそれらの商業化等がある。

C. 事前の情報に基づく同意

24.各国が自国の天然資源に対して主権的権利を有することを認めている生物多様性条約第15条に規定するとおり、この条約の各締約国は、他の締約国による環境上健全な利用のための遺伝資源へのアクセスおよびその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する環境を整えるよう努力しなければならない。生物多様性条約第15条5項に従って、遺伝資源へのアクセスは、当該遺伝資源の提供国である締約国が別段の決定を行う場合を除くほか、事前の情報に基づく当該締約国の同意を受けなければならない。

25.この背景の下で、この指針は、生物多様性条約第15条5項に従って、締約国の事前の情報に基づく同意システムの創設を支援することを意図している。


1. 事前の情報に基づく同意システムの基本原則

26.事前の情報に基づく同意の制度の基本原則は、次のものを含めるべきである:

(a)法的確実性および明確性;
(b)遺伝資源へのアクセスは、最低限の費用で促進されるべきである;
(c)遺伝資源へのアクセスの制限は、透明性を持ち、生物多様性を保全するための法的根拠に基づくべきである;
(d)提供国の権限ある国内当局の同意。状況に応じまたは国内法に従って、原住民・地域社会などの利害関係者の同意も得るべきである。

2. 事前の情報に基づく同意システムの要素

27.事前の情報に基づく同意システムの要素は、以下を含む場合がある:

(a)事前の情報に基づく同意の証拠を授与または提供する権限ある当局;
(b)時期および期限;
(c)利用の明細;
(d)事前の情報に基づく同意を得る手続き;
(e)利害関係者との協議のメカニズム;
(f)プロセス。

事前の情報に基づく同意を与える権限ある当局

28.生息域内の遺伝資源へのアクセスのための事前の情報に基づく同意は、当該締約国が別段の決定をする場合を除き、その権限ある国内当局を通じて、その資源を提供する締約国から得られなければならない。

29.事前の情報に基づく同意は、国内法に従って、政府の種々のレベルから要求される場合がある。そのため、提供国内における事前の情報に基づく同意を得るための要件(国レベル/県レベル/地方自治体レベル)が、明示されるべきである。

30.国内手続きは、簡素と明瞭を旨とし、共同体から政府レベルまでのすべての利害関係者の関与を容易にすべきである。

31.アクセスされる遺伝資源に関係のある原住民・地域社会、またはこれらの遺伝資源の伝統的知識に関係のある原住民・地域社会の既存の法的権利を尊重し、原住民・地域社会の事前の情報に基づく同意並びに伝統的知識、工夫および慣行の保有者の承認および関与を、その保有者の伝統的慣行、国内のアクセス政策および国内法に従って得るべきである。

32.生息域外収集については、事前の情報に基づく同意を、権限ある国内当局および/または当該生息域外収集を管理する組織から適宜得るべきである。

時期および期限

33.事前の情報に基づく同意は、アクセスを求める者と認める者の両者にとって役立つように、前もって適切な時期に求めるべきである。遺伝資源のアクセスの申請に対する決定も、合理的な期間内に行う必要がある。

利用の詳細

34.事前の情報に基づく同意は、同意が与えられる特定の利用に基づくべきである。事前の情報に基づく同意は初めは特定の利用について与えられるが、第三者への譲渡を含む何らかの利用の変更は、新たな事前の情報に基づく同意の申請を必要とする場合がある。許可される利用は、明確に規定されるべきであり、利用の変更または予見されない利用については別途事前の情報に基づく同意が要求されるべきである。世界分類学イニシアティブによって特定される分類学的および系統的研究の特定のニーズを配慮すべきである。

35.事前の情報に基づく同意は、相互に合意する条件に関する要件と連関している。

事前の情報に基づく同意を得る手続き

36.アクセスの申請には、権限ある当局が遺伝資源へのアクセスを与えるべきかどうかを決定するために、次の情報の提出を要求することができる。このリストは例示的なものであり、国内の状況に合わせるべきである:

(a)申請者の法的資格と所属、並びに申請者が機関の場合には、収集者とコンタクトパーン(機関)の法的資格と所属;
(b)アクセスが求められる遺伝資源の種類および量;
(c)活動の開始日および期間;
(d)地理的採取範囲;
(e)アクセスを与えることの相対的な費用対効果を判断するため、アクセス活動が生物多様性の保全と持続可能な利用にどのような影響を与えうるかの評価;
(f)意図した利用に関する正確な情報(例:分類学、収集、研究、商業化);
(g)研究開発が行われる場所の特定;
(h)研究開発が実施される方法に関する情報;
(i)研究開発を共同で行う地元機関の特定;
(j)第三者の関与の可能性;
(k)収集、研究の目的および期待される成果;
(l)遺伝資源の商業的または他の利用から生じる派生物または製品からの利益を含む、遺伝資源へのアクセスから生じる可能性のある利益の種類/型
(m)利益配分措置の特定;
(n)予算;
(o)機密情報の取扱い。

37.遺伝資源へのアクセスの許可は、必ずしもこれに関係した知識の利用の許可を意味するものではなく、その逆も同様である。

プロセス

38.事前の情報に基づく同意を通じた遺伝資源へのアクセスの申請および権限ある当局による遺伝資源へのアクセスの許可または不許可の決定は、文書化されなければならない。

39.権限ある当局は、許可または免許を発行するか、他の適切な手続きによってアクセスを与えることができる。すべての許可または免許の発行を記録するために、適正に記入された申請様式を基本とする国内登録制度を利用することができる。

40.アクセスの許可/免許を得るための手続きは、透明で、関心のある何人にも利用可能とされるべきである。

D. 相互に合意する条件

41.生物多様性条約第15条7項に従って、各締約国は、「遺伝資源の研究および開発の成果並びに商業的利用その他の利用から生ずる利益を当該遺伝資源の提供国である締約国と公正かつ衡平に配分するため、次条および第19条の規定に従い、必要な場合には第20条および第21条の規定に基づいて設ける資金供与の制度を通じ、適宜、法律上、行政上または政策上の措置をとる。その配分は、相互に合意する条件で行う。」したがって、指針は、公正かつ衡平な利益の配分を保証するために、相互に合意する条件の策定において締約国および利害関係者を支援するべきである。

1. 相互に合意する条件の基本的要件

42.相互に合意する条件の策定のために、次の原則または基本的要件を考慮することができる:

(a)法的確実性および明確性;
(b)例えば、次による取扱い費用の最小化;

()事前の情報に基づく同意および契約取り決めのための政府および利害関係者の要件に対する認識を確保し、促進すること;
()アクセスの申請、取り決めの締結および利益配分の保証のための既存メカニズムに関する認識を促進すること;
() その下で迅速な措置による反復的アクセスが行える、枠組み協定を策定すること;
() 類似の資源および類似の利用のための標準的素材移転協定および利益配分の措置を策定すること(その協定の推奨要素については附属書Tを参照);

(c)利用者および提供者の義務に関する規定を包含すること;
(d)種々の資源および利用に対する種々の契約取り決めおよびモデル協定の策定;
(e)種々の利用には、特に、分類学、収集、研究、商業化のための利用を含む;
(f)相互に合意する条件は、効率的に、合理的な期間内に交渉されるべきである;
(g)相互に合意する条件は、書面によって定められるべきである。

43.契約取り決めにおける指針項目として、次の要素を考慮することができる。これらの要素は、相互に合意する条件の基本的要件として考慮することもできる:

(a)特定の締約国および利害関係者、特に関係する原住民・地域社会の倫理的関心に配慮するために、資源の利用を規制すること;
(b)遺伝資源および関連する知識の継続した慣習的利用を確保する規定を設けること;
(c)知的財産権の利用のための規定は以下のことを含む:共同研究、取得した発明を実施する義務、および共同の合意によって実施権を許諾する義務;
(d)貢献度に応じた知的財産権の共同所有の可能性。

2. 典型的な相互に合意する条件の例示的リスト

44.以下は、典型的な相互に合意する条件の例示的リストである:

(a)遺伝資源の種類および量、並びに地理的/生態学的な活動範囲;
(b)素材の利用の可能性に対するすべての制限;
(c)原産国の主権的権利の認識;
(d)合意で特定される様々な分野における能力開発;
(e)一定の状況下での合意の条件(例、用途の変更)が再交渉されうるかどうかに関する条項;
(f)遺伝資源が第三者に譲渡できるかどうか、および、例えば商業化に関連しない分類学的および系統的研究を除き、第三者が類似の協定を締結することを確保せずにその第三者へ遺伝資源を渡すかどうか等、その場合に課すべき条件;
(g)原住民・地域社会の伝統的知識、工夫および慣行が尊重され、保全されおよび維持されているかどうか、および伝統的慣行に従った生物資源の慣習的利用が保護され、奨励されているかどうか;
(h)機密情報の取扱い;
(i)遺伝資源の商業的利用および他の利用、それらの派生物および製品から生じる利益の配分に関する規定。

3. 利益配分

45.相互に合意する条件には、配分されるべき利益の条件、義務、手続き、種類、時期、分配およびメカニズムを含めることができる。これらは、状況により、何が公正、衡平と見なされるかによって変化する。

利益の型

46.金銭的利益および非金銭的利益の例は、この指針の附属書Uに示す。

利益の時期

47.前払金、マイルストーン支払金およびロイヤリティーを含む、短期、中期および長期の利益を考慮すべきである。利益配分の時間的枠組を明確に規定すべきである。さらに、ケースバイケースで短期、中期および長期の利益の間のバランスを考慮すべきである。

利益の分配

48.事前の情報に基づく同意の後の相互に合意する条件に従って、利益は、資源管理、科学的および/または商業的プロセスに貢献したと認められるすべての関係者の間で、公正かつ衡平に配分されるべきである。後者には、政府、非政府または学術団体並びに原住民・地域社会を含める場合がある。利益は、生物多様性の保全と持続可能な利用を促進するように用いられるべきである。

利益配分のメカニズム

49.利益配分のメカニズムは、利益の型、関与する国および利害関係者の特定の状況に大きく依存する場合がある。利益配分メカニズムは、利益配分に関与する者によって決定され、ケースバイケースで変更できるよう、柔軟であるべきである。

50.利益配分のメカニズムには、信託基金、共同事業および優先条項付き実施許諾等の商業的所産から派生する利益と同様に、科学研究および技術開発における全面的な協力も含めるべきである。

V.その他の規定

A. インセンティブ

51.次のインセンティブ措置を、この指針の実施において使用できる措置として例示する:

(a)アクセスと利益配分を通じた生物多様性の保全と持続可能な利用の障害として作用する可能性のある誤ったインセンティブの特定と軽減または撤廃を検討すべきである;
(b)利益の衡平、効率的な分配を促進するために、アクセスと利益配分に直接あるいは間接的に関連する適切に設計された経済的、規制的手段の利用を検討すべきである;
(c)アクセスと利益配分に関与する利用者および提供者への情報提供ツールとして、価値測定方法の利用を検討すべきである;
(d)生物多様性の保全と持続可能な利用を効率的に達成する方法として、市場の創成と利用を検討すべきである。

B. アクセスと利益配分の措置の実施における説明責任

52.締約国は、アクセスと利益配分の措置に関与するすべての利害関係者が説明責任を果たすメカニズムを設置するよう努力をすべきである。

53.説明責任を果たすために、締約国は以下に関する要件を設けることを検討することができる:

(a)報告;および
(b)情報の開示。

54.収集者個人またはその収集者に依頼している機関は、適切な場合には、その収集者の順守に関して責任および説明責任を負うべきである。

C. 国内のモニタリングおよび報告

55.アクセスと利益配分の条件に応じて、国内のモニタリングには次の事柄を含める場合がある:

(a)遺伝資源の利用がアクセスと利益配分の条件を順守してなされているかどうか;
(b)研究開発のプロセス;
(c)提供された素材に関連する知的財産権の申請。

56.アクセスと利益配分の措置の策定および実施の様々な段階における利害関係者の関与、特に原住民・地域社会の関与は、順守状況のモニタリングを促進する際に重要な役割を果たすことができる。

D. 検証手段

57.生物多様性条約のアクセス規定および利益配分規定、並びに遺伝資源を提供する原産国の国内法令の順守を保証するために、任意の検証メカニズムを国レベルで策定することができる。

58.任意の認証制度は、アクセスと利益配分のプロセスの透明性を検証する手段として利用できる。その制度は、生物多様性条約のアクセスと利益配分規定が順守されていることを認証することができる。

E. 紛争解決

59.相互に合意した措置の下に生じるほとんどの義務は、提供者と利用者の間のものであることから、これらの措置から生じる紛争は、アクセスと利益配分に関する契約取り決め、準拠法および慣行に従って解決されるべきである。

60.生物多様性条約および遺伝資源の原産国の国内法令と整合性のあるアクセスと利益配分の協定が順守されていない場合には、契約取り決めに規定されている罰金のような制裁の活用を検討することができる。

F. 救済方法

61.締約国は、事前の情報に基づく同意および相互に合意する条件に関連する要件を含む、アクセスと利益配分に関する生物多様性条約の規定を実施する国内の法律上、行政上、または政策上の措置の違反に対して、適宜、効果的かつ程度に応じた措置をとることができる。



附属書T

素材移転協定の推奨要素

素材移転協定には、次の要素に関する文言を含める場合がある:

A. 前文規定

1.前文での生物多様性条約についての言及
2.遺伝資源の提供者および利用者の法的地位
3.遺伝資源の提供者の権限および/または一般目的、および、適切な場合には、利用者の権限および/または一般目的

B. アクセスと利益配分規定

1. 付帯情報を含めた素材移転協定に書かれている遺伝資源の説明
2. 素材移転協定の下で、潜在的利用も考慮し、遺伝資源の許可された用途、それらの製品または派生物(例:研究、育種、商業化)
3. いかなる用途変更も新たな事前の情報に基づく合意および素材移転協定を必要とするという旨の陳述
4. 知的財産権を申請するかどうか、およびその条件
5. 金銭的および非金銭的利益を配分することの言質を含む、利益配分措置の条件
6. 提供される素材の同一性および/または品質に対して提供者が保証しないこと
7. 遺伝資源および/または付帯情報を第三者へ移転することができるかどうか、およびその際適用されるべき条件
8. 定義
9. 収集活動の環境影響を最小化する義務

C. 法律的規定

1. 素材移転協定に従う義務
2. 有効期間
3. 協定の廃棄の通知
4. 一定の規定中の義務は協定の解除後も存続するという事実
5. 協定中の個々の規定の独立した強制力
6. いずれかの当事者の責任を制限する事象(天災地変、火災、洪水等)
7. 紛争解決取り決め
8. 権利の設定または移転
9. 素材移転協定を通じて受領した遺伝資源に関する知的財産権を含むすべての財産権に対する請求権の設定、移転または排除
10.準拠法の選択
11.機密保持規定
12.保証

附属書II

金銭的および非金銭的利益
1. 金銭的利益には、次のものを含めることができるが、これに限るものではない:

(a)アクセス料金、または収集やその他の方法で取得した標本毎の料金;
(b)前払い金;
(c)マイルストーン支払金;
(d)ロイヤリティー支払金;
(e)商業化の場合の実施許諾料;
(f)生物多様性の保全と持続可能な利用を支援する信託基金へ支払う特別料金;
(g)給与および相互に合意する場合には特恵条項;
(h)研究資金;
(i)共同事業;
(j)関連する知的財産権の共同所有。

2. 非金銭的利益には、次のものを含めることができるが、これに限るものではない:

(a)研究開発成果の共有;
(b)可能な場合は提供国内での、科学的研究開発プログラム、特にバイオテクノロジー研究活動における共同、協力および貢献;
(c)製品開発への参加;
(d)教育訓練における共同、協力および貢献;
(e)遺伝資源の生息域外施設とデータベースへの入場許可;
(f)遺伝資源の提供者に対する、譲許条項と優先条項を含む公正で最恵当事者条件下での知識と技術の移転、特にバイオテクノロジーを含む遺伝資源を利用する知識と技術、または生物多様性の保全と持続可能な利用に関係する知識と技術;
(g)利用者としての開発途上締約国および経済移行過程締約国への技術移転。遺伝資源を提供する原産国内での技術開発の能力の強化。原住民・地域社会による遺伝資源の保全と持続可能な利用能力の促進;
(h)制度的な能力開発;
(i)アクセス規制の行政管理と実施の能力を強化するための人的および物的資源;
(j)提供締約国が全面的に参加し、可能ならばその締約国内で行う、遺伝資源に関連する研修;
(k)生物学的目録と分類学研究を含む、生物多様性の保全と持続可能な利用に関連する科学情報へのアクセス;
(l)地域経済への貢献;
(m)提供国内での遺伝資源の利用を考慮した、保健および食糧安全保障のような優先度の高いニーズに沿った研究;
(n)アクセスと利益配分の協定から生じ得る機関間や職業上の関係およびその後の共同活動;
(o)食糧・生活安全保障上の利益;
(p)社会的認知
(q)関連する知的財産権の共同所有。

経済産業省の委託に基づいて、財団法人バイオインダストリー協会が作成いたしました
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